「君の話し方は、物語を書く人のそれだから」
知ってるよ、とは言わなかった。
深夜、広めの湯船に浸かって仕事とプライベートの混じった話をしていて、ふと、そんなふうに評価されても私にはもう何も書ける気がしないから。
そもそも書き上げる努力ができない時点で向いていない。私が書いたものを、誰かに読んで欲しいと思う気持ち、そういうタイプの承認欲求が弱く、低くなっている。
衰えた感受性、堕落して爛れた生活、10年後自分がそうなるとあの頃の私は想像できなかった。そういうことなのかもしれない。
(でも正直なところ、ここはそういう書きたいけど書けないの整理をする場所)
「何でもいいから書いたらいいのに」
「最近はそれどころじゃなくて、」
なぜか最近一日一食だし、平日は4時間しか眠れないし、仕事は増えても評価されている気がしないし、言い訳を積み上げてみて言うのをやめる。
もう出ましょう、と立ち上がると何故か笑った。どうして、と。
*
記憶にも身体にも痣をつけてしまった、夜明け前。椋鳥たちは電線の上で眠っている。
差し出された手に触れないまま、交差点を横切る、このままどこかに行ってしまいたいけど、出口は塞がれている。
私はこの人とは目をあわせない。